…それ、刺さると思ってる?榊さんが、はるかに相談してきたLINE。
「いや、この記事、正直グサッときたよ。」
そう言って、スマホ片手に部屋にやってきたのは榊さん。
— はるかがこの前出した、
『そのLINE、“優しさ”で終わってない?』って記事を読んだらしい。
「でもさ、ちゃんと理解もした。
なるほどなって思ったんだよ。
感情が伝わるLINEって、確かに女子に刺さるんだなって」
うん、と私は静かにうなずく。
榊さんは、自分の言葉で一生懸命整理してた。
ここからが、たぶん本題だった。
「でさ、実は昨日、会社の子と飲みに行っててさ。
そのあと、LINE送ろうと思って、ちゃんと考えたんだよ。」
「“昨夜はありがとう!〇〇さんと飲んでたら時間忘れるぐらい楽しかった。
今度はもっと〇〇さんのこと聞きたいから、また近いうち食事にでもいこうね。”
——これって、どう?うまく伝わると思う?」
彼は真剣だった。
優しい言葉を丁寧に並べた、好感度の高いLINE。
でも――私は、そのままの言葉を肯定できなかった。
「榊さん、それ、優しすぎるんですよ。」
静かに、でもしっかり言葉を選んで返す。
「うん、文章としてはすごく丁寧。印象もいいし、相手に嫌がられる要素はない。
でもね…正直に言っていい?」
「女子目線で見ると、刺さらない。」
榊さんの眉が少し動く。
「えっ、なんで?温度ちゃんと込めたつもりだけど…」
私は、そこにある“もったいなさ”を伝えたかった。
曖昧な優しさは、“誰でもいい感”になる
「たとえば『楽しかった』って言ってるけど、何が楽しかったの?
どこに心が動いたの?
それが書かれてないと、“社交辞令の定型文”に見えちゃうんだよね。」
「“もっと聞きたい”って言ってるのに、
その熱量に見合う“次の行動”がぼやかされてる。
『また近いうちに』って、具体性がないでしょ?」
榊さんはゆっくりと、息を飲んだ。
私は続ける。
「優しいけど、
“あなたじゃなくても送れるLINE”って、女子はすぐ見抜くよ。」
「そのLINE、優しさの仮面をかぶってるけど、
本音では“自分が否定されないライン”に逃げてない?」
「いや、逃げたくて書いたわけじゃない」
榊さんの声が、少しだけ強くなる。
「俺、ちゃんと相手のこと大事にしたかったんだよ。
急にガツガツ行ったら、引かれるかもって思って…
逃げたっていうより、“余白を残した”っていうか…」
私はその言葉をしばらく受け止めてから、ゆっくり返した。
「わかるよ。ほんとに。
それ、すごく大事にしてるからこそ出る慎重さだよね。」
「でもね、榊さん。
女子って、“余白”じゃなくて、“意志”を見てるんだよ。」
「『また近いうち』より、
『来週どこかで時間作れたら嬉しい』の方が、
よっぽど誠実に伝わる。」
「言い切らないことで逃げ道はできるかもしれないけど、
伝わらないまま終わるリスクも、同時に生まれるの。」
だから、“あと一歩”を踏み込んでみて
私は、テーブルの上にそっとスマホを置いた。
「もしはるかが女子の立場でそのLINEをもらったら、
『悪くないけど…うーん、“本命”って感じじゃないな』って思っちゃうかも。」
「逆に、こう言われたら?」
「昨日ありがとう。
〇〇さんの話、聞いてると時間ほんとに一瞬だった。
もっと知りたいと思ったし、
もし来週どこかで会えたら嬉しいな。」
「会いたいって“言い切ってない”けど、
ちゃんと熱が伝わるでしょ?」
榊さんは、小さくうなずいた。
「…たしかに、その方が、自分に向いてる感じがするな。」
はるかの本音
榊さん、優しさって、ほんとに尊いこと。
でもそれが“伝わらない”なら、意味がないんだよ。
女子はね、丁寧より、“気持ちがちゃんと向いてるか”を見てる。
優しさの中に、“あなたじゃなきゃダメ”って温度が入った瞬間、
恋は動き出すの。
だから、踏み込んでみて。
言いすぎるくらいで、ちょうどいいよ。
次回予告
次はね、榊さんが実際にそのLINEを少し変えて送ってみた結果、
女子から返ってきた“まさかの返信”を見せてもらう予定。
失敗じゃない。
踏み込んだ言葉の、その先に何が待ってたのか。